市営住宅へ入居後、名義人の死亡や離婚等による転出があった場合、退去しなければなりませんか?
公営住宅の使用権は相続の対象になりません。
なぜなら、公営住宅は本当に住まいに困っている低所得者のために建設された住宅であり、入居に際し、一定の要件を設けているためです。このことから、長期にわたり、同一親族が居住することによって、入居を待っている方との間に不公平感が生じないようにする必要があります。
よって、名義人が死亡や転出した場合、退去しなければならないケースも出てきます。この点が、民間の賃貸住宅との大きな違いです。
公営住宅の入居承認制度とは
公営住宅には、同居者に名義変更することにより、名義人の死亡や転出後も引き続き、市営住宅や県営住宅の使用を認める『入居承認制度』というものがあります。名義変更を行い、引き続き公営住宅に住むためには、入居承継承認の申請が必要です。ただし、申請を行うためには要件に合致していなければなりません。
以前は、同居承認を受けている方のうち、自治体が定める基準を満たしていれば、入居の承継が認められていました。しかし、近年では多くの自治体で、この基準が厳格化され、対象が限定的になっています。
これは、平成17年に下記のような公営住宅制度の見直しが行われ、国から各自治体に向けて通達があったためです。この見直しの背景には、長年にわたり同一親族が居住し続け、入居者と非入居者間の公平性が著しく損なわれているという事実があり、その是正を目的としたものです。ただし、あくまで判断は各自治体に委ねられているため、中には現在も従来の基準のままの自治体もあります。
同居承認及び入居承継承認運用指針(改正後) 入居承継の承認は、原則として、次の事由による場合において、承継事由発生時の入居名義人の同居者である配偶者(婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者その他婚姻の予定者を含む。)及び高齢者、障害者等で特に居住の安定を図る必要がある者について行うことができるものとする。 出典:国土交通省 「社会資本整備審議会答申以降の制度見直しについて」 |
入居者の入居承継基準
では、具体的にどのような要件を満たせば、名義人の退去・死亡後も公営住宅に住み続けることができるのでしょうか。多くの自治体では、入居承継の申請ができるのは、入居の承継をしようとする人が、下記に該当する場合に限定しています。
- 名義人の配偶者
- 60歳以上の高齢者
- 身体障がい者(1級から4級まで)
- 精神障がい者(1級から3級まで)
- 知的障がい者(精神障がい者の精神障害の程度に相当する程度)
- 生活保護受給者
- 母子・父子家庭の父母(子どもが18歳未満の場合)
- その他、とくに居住の安定を図る必要のある方
※自治体ごとに基準が異なりますので、詳細については、所轄の窓口へお問い合わせください。
入居承継基準は入居承継事由が発生した日が基準となる
入居承継基準は申請した日ではなく、名義人が退去した日や死亡した日など、入居承継事由が発生した日を基準に判断されます。入居承継の申請期限も、この日を基準に自治体ごとに定められているため、予め申請期限を確認しておきましょう。期限を超過して申請した場合、要件を満たしていても、退去を求められる可能性がありますので、注意が必要です。
【参考】同居者が死亡や転出した場合は?
ここまでは、名義人が死亡や転出した場合について、お伝えしました。では、同居者が死亡したり、転出したりした場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。
名義人ではなく、同居者が死亡や転出(結婚・離婚等)した場合、『同居者異動届』の提出が必要です。併せて住民票の届出も必要になります。詳細については、管轄の窓口へご確認ください。