学生でも入居可能な公営住宅はありますか?

特定の条件付きではありますが、全国の多くの自治体で学生の入居を認める取り組みが広がっています。
これは、老朽化が進む公営住宅(都営住宅、県営住宅、市営住宅)の空き室対策や、入居者の高齢化によって機能が低下した地域コミュニティの活性化を図ることを主な目的としています。
以下に学生が公営住宅に入居可能になった背景とその仕組み、具体的な事例をご紹介します。

制度の背景と基本的な仕組み

1. 入居条件の緩和

公営住宅は原則として、所得が低く住居に困っている世帯の入居を対象としています。特に都営住宅では、以前は学生の一人暮らしは不可とされていました。しかし、空き家率の増加や入居者の高齢化(全国の公営住宅の入居者の約6割、東京都では7割が65歳以上の高齢者世帯を占める例もあります)という構造的な課題に直面し、現在は国(国土交通省)の許可を得ることで、若者世代の受け入れのために要件を緩和できるようになっています。

2. 入居の必須条件:地域活動への参加

学生が入居を許可される際の共通の要件として、自治会活動への参加が申込条件となっています。これは単に安価な住居の提供を行うのではなく、学生に「コミュニティ・ワーク」の対価として安価な家賃を提供する仕組みです。
具体的な活動内容として、以下のようなものがあります。
団地内の清掃活動(クリーン作戦)や除雪作業
自治会(町内会)の定例会への出席
高齢者の見守り活動、日常的な挨拶運動、安否確認システムの構築
夏祭りや地域行事の設営・運営、祭りの手伝い
子どもの学習支援や登校見守り

3. 経済的なメリット

学生にとっては、安価で安定した住居を得ることで、都市部で高止まりする家賃負担(東京圏では平均家賃が7万円台前半)を軽減し、学業に集中しやすくなるメリットがあります。
また、地域交流は、大学の講義では得られない実践的な社会教育の場にもなっています。

各地の取り組み事例

現在、全国の多くの自治体が、大学や専門学校と協定を結び、学生の入居を積極的に進めています。
以下はその一例です。
自治体
住宅の種類
対象大学
家賃の目安
主な活動例
実施背景・詳細
東京都墨田区
都営住宅(文花一丁目アパート)
情報経営イノベーション専門職大学など都内の大学(9大学と協定)
2DKで月2万円
地域活動への参加、資源ごみの回収、子どもの学習支援
築50年超、空室が目立つ大規模団地の活性化が狙い。2024年3月時点で54人が入居
札幌市
市営住宅(もみじ台団地など)
北星学園大学、札幌学院大学
2DKで月1万2000円程度
清掃、除雪当番、祭りの手伝い
エレベーターがなく上層階に空き室が目立つ住宅の有効活用。現在9人の学生が入居
京都市伏見区
市営住宅(田中宮市営住宅)
龍谷大学
調査中
自治会役員としての行事運営、朝のあいさつ運動、防災訓練への参加
2019年開始の「3L APARTMENT プロジェクト」として、地域(Local)、学び(Learning)、暮らし(Life)を重視
名古屋市
市営住宅(万場荘)
同朋大学
3DKで月2万7000円~3万400円
清掃活動、登校見守り、盆踊りの自転車整理
近隣の民間集合住宅の家賃(5万5000円以上)のほぼ半額
東松山市(埼玉県)
市営住宅(若松町住宅)
武蔵丘短期大学
3DKで月20,500円(共益費1,500円)
自治会活動への参加(清掃など)
築41年、5階建て(エレベーターなし)の住戸を募集。敷金は不要
兵庫県
県営住宅
(特定の大学ではない)
※調査中
自治会活動への参加(自治会の会議や草刈り作業、イベント運営等)
若い世代の経済的負担軽減と県内定住を促すことが目的。奨学金返済者向けの優先枠も設けられている。

条件が合わずに入居できない場合は・・・

世帯所得が15万8千円(月額)を超過するなどの理由で入居条件を満たせず、市営住宅・県営住宅の申込みができない場合は、各都道府県や市区町村の「公社賃貸住宅」や「セーフティネット住宅」、「UR賃貸住宅」といった公的賃貸住宅の利用を検討してみましょう。
詳細は各団体にお問い合わせください。

公社賃貸住宅

公社賃貸住宅とは、国や地方自治体の出資によって設立された法人「地方住宅供給公社(略称:JKK)」が所有・管理している賃貸住宅を指します。
地方住宅供給公社の数は、2020年4月時点で、全国に37公社(都道府県:29公社、政令指定都市:8公社)となっています。
東京都の「東京都住宅供給公社」や、神奈川県の「神奈川県住宅供給公社」もその1つです。
公社賃貸住宅の大きな特徴として、
・礼金や仲介手数料が発生しないため、入居時の初期費用を抑えることができる
・18歳未満の子供がいる家庭や、高齢の方がいる家庭などは、優先的に申し込みが可能
という点が挙げられます。
全国の住宅供給公社一覧

セーフティネット住宅

住宅セーフティネット制度(最低限の安全を保障する社会的制度)の一環として経済的に困窮されている方をはじめ、高齢者や障碍者、子育て世帯、外国人、災害被災者など住宅にお困りの方々を対象に、安全かつ良質な住まいとして登録された住宅(セーフティネット住宅)を指します。
住宅確保要配慮者であっても入居を拒まれることはありません。
家賃や保証料の減免・補助が受けられる場合もあります。
セーフティネット住宅情報システム

UR都市機構

UR都市機構が都市公団から受け継いだ、全国約71万戸の賃貸住宅です。
UR賃貸住宅は新築を除き、多くの場合空きがある限り、無抽選・先着順受付で入居が可能です。
保証人だけではなく、礼金、手数料、更新料も不要で、割引制度も充実しています。
ワンルームタイプからファミリー向けまで、間取りの豊富さや広さも魅力の1つです。
UR賃貸住宅

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